脳境界を標的とした統合的解析による脳形成メカニズム
および細胞特性の理解


増田 隆博(マスダ タカヒロ)さん

九州大学 生体防御医学研究所

研究の背景

脳の表面を覆う髄膜や血管周囲空間といった脳境界領域は、これまで脳実質と末梢をつなぐ単なるハブ組織と考えられてきましたが、近年脳の形成・維持および疾患発症における機能的重要性に注目が集まっています。私たちは、脳境界領域の成り立ちや、特殊なマクロファージを含めた脳境界構成細胞群の機能や細胞特性などの統合的理解を目的とした多角的な研究を展開してきました。

研究の成果・ポイント

  • 1細胞解析技術やFate-mappingなどの最新技術を駆使して、脳境界マクロファージの組織内分布パターンや遺伝子発現プロファイルを含めた細胞特性を明らかにしました。
  • ミクログリア(脳実質マクロファージ)と脳境界マクロファージの類似性や相違点を明確にし、また両者の正確な分離機能解析を可能にする汎用性の高い細胞機能操作ツールの独自開発にも成功しました。また、それらを用いて、脳境界マクロファージの発生学的特性や分化成熟メカニズム、細胞内の転写制御メカニズムを明らかにしました。
  • 既存の概念を覆す発達期に脳境界領域の形成パターンを明らかにし、また血管平滑筋細胞との相互作用を介した脳境界マクロファージの脳境界定着メカニズムを明らかにしました。

プリント

今後の展望

脳の形成および機能制御における新たなプレイヤーとして脳境界の重要性を提唱するだけでなく、脳神経科学や免疫学領域を巻き込んだ「脳境界生物学」という新たな研究の潮流を生み出すものと期待されます。

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