⽔晶体上⽪細胞の全オルガネラ分解機構の研究


森下 英晃 (モリシタ ヒデアキ) さん

順天堂⼤学 医学部

研究の背景

真核生物の細胞内にはミトコンドリア、小胞体、ゴルジ体、リソソームなどの様々なオルガネラ(細胞小器官)が備わっていますが、目の水晶体を構成する細胞の最終分化の過程では、それらのオルガネラはすべて分解され消失します。この「全オルガネラ分解現象」は100年以上前から知られていましたが、その分子機構や生理的意義は不明でした。

研究の成果・ポイント

  • 水晶体の全オルガネラ分解は、通常の細胞でオルガネラ分解を担うオートファジーではなく、サイトゾルに存在するPLAATホスホリパーゼによること、その作用は水晶体の透明化に必須であることを見出しました。

  • さらにPLAATは損傷オルガネラを選択的に分解すること、水晶体における生理的な損傷オルガネラの出現はヒト遺伝性白内障の原因遺伝子産物である熱ショック転写因子HSF4に依存して起こることも見出しました。

  • 以上の研究により、水晶体の透明化の基本的な原理が解明されるとともに、オートファジーによらないオルガネラ分解機構の存在が初めて明らかになりました。

今後の展望

PLAATは様々な臓器に発現していますので、これらの臓器でもPLAATが損傷オルガネラの分解に関与している可能性があります。今後、PLAAT依存的オルガネラ分解機構の詳細な作用機序や様々な臓器・疾患における役割が解明されることが期待されます。

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