上皮細胞の細胞膜構造形成に関する研究


池ノ内 順一 (イケノウチ ジュンイチ) さん

九州大学大学院 理学研究院

研究の背景

体の表面や消化管などの器官の表面は上皮細胞のシートで覆われています。上皮細胞には、外界との物質の交換に関わる微絨毛や、外界からの異物の侵入を防ぐタイトジャンクションなどの細胞膜構造が存在します。このような細胞膜構造は、多数の脂質分子、膜タンパク質、裏打ちタンパク質、細胞骨格などの要素が組み合わさって形成される超分子複合体です。私たちは、このような細胞膜構造の量や質を制御するメカニズムに興味を持ち研究を行ってきました。

研究の成果・ポイント

  • 3つの上皮細胞が接着する領域に形成される特殊なタイトジャンクションに局在する膜タンパク質トリセルリンを同定し、その機能を明らかにしました。

  • タイトジャンクションには、極長鎖脂肪酸鎖のスフィンゴミエリンとコレステロールが集積しており、これらの脂質がタイトジャンクションの形成に必須であることを明らかにしました。

  • タイトジャンクションのみならず、微絨毛や浸潤性がん細胞が形成するブレブと呼ばれる細胞膜構造についても、その構造形成の動的な分子メカニズムを明らかにしました。

今後の展望

タイトジャンクションの接着分子であるクローディンの発現量をいくら増加させてもタイトジャンクションの形成量を増加させたり、上皮細胞のバリア機能を増強することはできません。細胞膜構造の形成メカニズムを明らかにすることによって、機能的な膜構造の形成や消失を人為的に制御する方法を確立し、将来的に慢性炎症などの上皮細胞シートの機能不全によっておこる疾患の予防法や治療法の開発に繋げたいと考えています。

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