皮下神経や腸を介した温度感知・応答の分子組織ネットワーク


久原 篤 さん

甲南大学 理工学部

研究の背景

私たちは、環境の光や温度を末梢の神経系で感じます。そのような感覚のうち、光や匂いはGαというタンパク質で処理されるのに対して、温度は皮下神経におけるTRP型チャネルで受け取られます。私たちは、動物の温度感覚や低温耐性の新しい仕組みを見つけるために、小さな実験動物であるセンチュウの低温耐性という現象に注目して研究をしてきました。

研究の成果・ポイント

  • ヒトの表皮が接触刺激を受け取るときに働くメカノ受容体(DEG/ENaC)が、温度受容体としてもはたらき、センチュウではDEG/ENaCが体の低温耐性に関わっていました。

  • センチュウの光受容ニューロンが温度も感知し、温度情報が光情報と同様にGαを介して伝えられることが見つかりました。

  • 頭部皮下の温度受容ニューロンがインスリンを分泌し、それが腸で受け取られ、体の低温耐性を変化させるという、動物の低温耐性をシンプルに解析できる実験系を確立しました。

  • 腸が精子に影響を与え、精子が頭部皮下の温度受容ニューロンを調節する低温耐性における組織ネットワークを見つけました。

今後の展望

センチュウの低温耐性の解析からみつかった皮下神経ではたらく新しい温度受容体は、ヒトでも温度を受容していました。今後も同様に種間で共通した温度感覚や低温耐性の新しい仕組みが見つかってくると期待されます。それらを活用することにより、細胞の低温長期保存などが可能になるかもしれません。

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