柱型環状分子ピラーアレーンの創成と機能性空間材料への展開
生越 友樹 さん
金沢大学 新学術創成研究機構 ナノ生命科学研究所
オングストロームサイズの空間を有したリング状分子は、鍵と鍵穴の関係のように、その空間サイズに適合したゲスト分子を選択的に取り込むことができる。そのため分子と分子を弱い非共有結合で連結して集積化させ、集積化により新機能を発現させるという超分子化学の主役を担ってきた。我々は、これまでに例を見ない「柱型」という、新形状の環状ホスト分子「ピラーアレーン」の開発に成功した。
ピラーアレーンは、安価な試薬から短時間で、容易に合成が可能な分子である。そのため我々による2008年の最初のピラーアレーンに関する報告からわずか11年あまりで、ピラー[n]アレーンに関する600 報を越える学術論文が発表され、その数は年を追うごとに右肩上がりで急増している。また我々は、ピラーアレーンの正多角柱構造を活かした幾何学的デザインに基づく、1次元チャンネル、2次元シート、3次元球状空間材料を創出した。
このようにして得られた空間材料は、通常は分離困難な分子の形状を見分けることができ、分離・センサー材料としての応用が可能であった。このように我々は、「ピラーアレーン」の開発を行い、それを基に分子空間材料へと展開し、世界の化学者が参画するピラーアレーン化学という新分野の端緒を切り拓いた。