固体触媒の分子レベル表面構築とXAFSイメージング

唯 美津木 さん

名古屋大学 物質科学国際研究センター

 物質変換・エネルギー変換の要となる固体触媒は、その優れた触媒特性を生かして、現代社会における様々な化学プロセスに用いられている極めて重要な物質群である。しかしながら、反応とともに複数の物質組成が時々刻々変化する固体触媒系において、表面の触媒活性構造やそのダイナミックな働きを理解することは依然として難しい。金属錯体固定化や触媒表面の機能化修飾、分子インプリントなどの表面設計法を基盤とした触媒活性構造の分子レベル構築法を開拓するとともに、触媒反応が進行しているその場 (in situ) で、触媒自身の構造や挙動を直接明らかにできるXAFSイメージング法を立ち上げ、高活性固体触媒の活性構造の空間分布や挙動、反応様式の可視化に成功した。例えば、クリーンエネルギーとして実用化が進められている固体高分子形燃料電池の非破壊三次元診断が可能なトモグラフィー/ラミノグラフィーXAFS法を開発し、実用化・普及に向けた最重要課題の一つである運転時のカソード極の触媒劣化の様子を三次元的に可視化した。これらの研究は、ブラックボックスとなってきた不均質な固体材料中における触媒活性種分布、挙動、反応様式、劣化様式などの鍵因子を直接観察・研究できる道を切り開き、可視化に基づいた触媒表面の自在構築に向けた新たな研究領域を開拓した。


図
X線ラミノグラフィーXAFS法によって可視化された
固体高分子形燃料電池膜電極接合体内部の白金触媒の三次元分布。