制御された単分子接合における電子伝導特性の解明

木口 学 さん

東京工業大学大学院 理工学研究科 化学専攻

 金属電極に単分子を架橋させた単分子接合は分子エレクトロニクスへの応用が期待され注目を集めている。我々は、新規金属/分子接合部位の開拓、架橋状態の規定という2本の柱で単分子接合研究を展開し、単分子接合に特徴的な新規物性を明らかにしてきた。金属/分子の接合部位の開拓では、我々はPt-CN接合を含む10種類の新規接合部位を開拓し、従来のAu-S接合を用いる単分子接合と比較して10倍以上単分子接合の伝導度を向上させることに成功した。単分子の架橋状態を明らかにするため、我々は超高真空、極低温で動作する単分子の振動スペクトル計測装置を開発した。単分子の振動分光法を水素分子接合に適用することで、水素単分子がPt単原子ワイヤーにより根本の金属電極に接続されるという究極の単分子接合を作製することに成功した。またベンゼンを用いる事で、世界で初めて有機分子について単分子の振動スペクトルを計測することに成功した。このベンゼン単分子接合ではさらにノイズ計測、伝導度計測、理論計算と振動スペクトルを組み合わせ、ベンゼン単分子接合が金属単原子接合と同程度の高い伝導度を示す事を明らかにした。バルクでは絶縁体であるベンゼンが単分子接合では金属的な電子伝導特性を示すという結果は単分子接合特有の現象の発見と言える。今後は、単分子接合の物性を外部摂動によって自在に制御する事に挑戦し、さらに単分子接合に関する研究を展開できたらと考えている。

図

(a)イソシアニドベンゼン溶液中におけるAuナノ接合破断時の伝導度変化. (b) Pt電極に架橋したベンゼン単分子の伝導度のバイアス依存性、その微分スペクトル(振動スペクトル)