ミトコンドリアの膜ダイナミックス制御とその生理機能的役割に関する研究

小柴 琢己 さん

九州大学大学院 理学研究院 生物科学部門

 細胞内エネルギー工場であるミトコンドリアは、真核細胞には不可欠のオルガネラであり、その形態は細胞質全体に管状の網様構造 (tubular network) を形成・分布し、ダイナミックに分裂と融合を繰り返している。近年の研究から、細胞内におけるミトコンドリアの動態に異常が生じると、神経変性疾患、発癌、老化現象、さらには様々な炎症反応と結びつくことが次第に明らかとなってきた。我々は、ミトコンドリア膜動態の制御機構に関する分子基盤解析、ならびにその生理学的な意義に関する研究をこれまで進めており、1). ミトコンドリアの融合機構の作用機序、2). 抗ウイルス自然免疫とミトコンドリア動態の関連性、さらには3). ミトコンドリア内膜電位のシグナル伝達における役割、などミトコンドリア「膜表面の科学」にまつわるメカニズムを明らかにしてきた。本研究成果は、ミトコンドリア関連疾患などの発症機構の理解や、ミトコンドリア機能不全に伴う抗ウイルス免疫との因果関係を理解する上で大きく貢献することが期待される。


図

ダイナミックなミトコンドリア。(左)細胞内のミトコンドリアの形態は、絶えず融合と分裂を切り返しながら維持されている。(右)NIH3T3細胞内のミトコンドリア(緑)を可視化した様子。写真は生物物理51, 174-177 (2011)より引用。