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研究紹介

ギリシアのローマ期モザイク(テッセラ・モザイク)についての研究

つるしいん さとこ
四十九院 仁子 さん

【はじめに】

 私の研究テーマは「ギリシアのローマ期モザイク(テッセラ・モザイク)についての研究」です。ギリシアには前5世紀より小石を原料とした小石モザイクの作例が存在し、これらはヘレニズム期に主流となったテッセラ・モザイクに先駆け制作されました。ヘレニズム期に小石モザイクからテッセラ・モザイクへ技術が移行し、オプス・ウェルミクラトゥムの作例がイタリアを中心に制作されました。ヘレニズム期の完成度の高い作例に研究が集中するのに対し、ローマ期の作例は地域ごとに断片的に論じられる傾向があります。

【研究業績とポイント】

 筑波大学大学院で、古代末期のセグメントゥムと呼ばれる衣装の装飾についての修士論文と、モザイクに表現されたセグメントゥムの機能についての投稿論文を準備している折、ギリシアのローマ期モザイクについての先行研究が少ないことを知りました。後にアテネ大学大学院への留学中に、多くのローマ期モザイクが明らかになっているものの、断片的であることが分かりました。断片的な作例を一つずつ文献から跡づけ、モザイクと建造物と関連や地域ごとの特徴を推測することが出来ました。
 以上の調査から、ギリシアのローマ期モザイクが古典期の小石モザイク、ヘレニズム期のテッセラ・モザイクという長い伝統を有していることに着目し、図像主題と幾何学文様の作例に言及したのが、平成17年に筑波大学に提出した博士論文「ギリシア、ペロポニソス地方におけるローマ期モザイクについての研究」です。その一部を加筆修正したものが、平成18年にアルゴ会論文集に掲載されました。
 ギリシア、オナシス財団のご支援と、アテネ大学考古学科のエレフセリア・セルベティ教授のご指導のもと、ギリシア人が自国の歴史をどのように認識しているかを肌で感じながらの調査研究は非常に有意義でした。イタリア、トルコ、シリアなどでも同様に現地調査を重ね、考古学や美術史に加えて、地誌を取り入れたことが本研究のポイントです。

【今後の展望】

 ギリシアのローマ期モザイクの状況が明らかになることは、モザイクの発展経緯だけでなく、ローマ帝国の東西交流の経路が明らかになる可能性につながり、イタリアやトルコのローマ期モザイクの研究にも非常に有益です。今後もギリシアのローマ期モザイクについての研究を継続し、より多くの地域のローマ期モザイクを多角的に明らかにしたいと考えています。

(参考文献)

  • ΑΣΗΜΑΚΟΠΟΥΛΟΥ−ΑΤΖΑΚΑ, Γ. ‘ΚΑΤΑΛΟΓΟΣ ΡΩΜΑΙΚΩΝ ΨΗΦΙΔΩΤΩΝ ΔΑΠΕΔΩΝ ΜΕ ΑΝΘΡΩΠΙΚΕΣ ΜΟΡΦΕΣ ΣΤΟΝ ΕΛΛΗΝΙΚΟ ΧΩΡΟ’ ΕΛΛΗΝΙΚΑ 26, 216-54
  • ΑΣΗΜΑΚΟΠΟΥΛΟΥ−ΑΤΖΑΚΑ, Π. ΣΥΝΤΑΓΜΑ ΤΩΝ ΠΑΛΑΙΟΧΡΙΣΤΙΑΝΙΚΩΝ ΨΗΦΙ−ΔΩΤΩΝ ΔΑΠΕΔΩΝ ΤΗΣ ΕΛΛΑΔΑΣ ΙΙ: ΠΕΛΟΠΟΝΝΗΣΟΣ−ΣΤΕΡΕΑ ΕΛΛΑΔΑ, ΘΕΣΣΑΛΟ− ΝΙΚΗ:ΚΕΝΤΡΟ ΒΥΖΑΝΤΙΝΩΝ ΕΡΕΥΝΩΝ, 1987
  • Dunbabin, K. M. D. Mosaics of the Greek and Roman world, Cambridge U.P., 1999
  • Kondoleon, C. Domestic and Divine: Roman Mosaics in the House of Dionysos, Cornell U.P., 1995
  • ΚΡΙΤΖΑΣ, Χ. ΑΡΧΑΙΟΡΟΓΙΚΟ ΔΕΡΤΙΟΝ 29(1973−4), ΧΡΟΝΙΚΑ Β’2 , 1979, 231−42
  • Packard, P. ‘A monochrome mosaic at Isthmia’ Hesperia 49, 1980, 326-46
  • Sweetman, R. J. The Mosaics of Roman and Early Christian Crete, Unpublished doctoral dissertation submitted to the University of Nottingham, 1999
  • Waywell, S. E. ‘Roman Mosaics in Greece’ American Journal of Archaeology 83, 1979, 293-311 (Pls.45-52)

(用語説明)

オプス・ウェルミクラトゥム(opus wermiculatum)
 大理石やガラス等を材料としたモザイクを構成する最も小さな部分をテッセラと呼ぶ。4ミリ平方以下の小さなテッセラを用いた緻密で繊細なモザイク(の技法)は、オプス・ウェルミクラトゥムと呼ばれ、ヘレニズム期以降のエンブレマと呼ばれる床モザイクの中心部分に見いだせる。

(図版資料説明)

イストミア、ポセイドン神殿北の浴場、部屋VIのモザイク(20.2×7.8m)、2世紀中葉
イストミア、ポセイドン神殿北の浴場、部屋VIのモザイク(20.2×7.8m)、2世紀中葉
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