戦後日本のパフォーマンス・アート研究―実験工房からフルクサスまで―

西澤 晴美(にしざわ はるみ) さん

(受賞決定時)神奈川県立近代美術館 非常勤学芸員、2012年4月~神奈川県立近代美術館 常勤学芸員

研究の背景

 本研究は、「ジャンル横断的表現活動」をテーマとしています。グローバル化した現代アートの展覧会においては、「絵画」や「彫刻」といった従来の美術形式ではなく、音響やヴィデオを用いたもの、身体表現によるものなど、演劇や音楽など他の芸術ジャンルとの深い関わりが看取される作品が多く、そうした美術(アート)の変容を歴史的な観点から実証的に解明したいと考えたのが研究の大きな動機でした。身体を駆使する表現、すなわちパフォーマンス・アートの展開を考慮し、本研究では考察対象を美術、演劇、音楽の境界ジャンルと設定しました。


研究の成果・ポイント

 1951年に結成された「実験工房」は、山口勝弘、秋山邦晴、武満徹、湯浅譲二ら美術と音楽のメンバーから構成され、その活動は舞台芸術や映画の方面へと展開しました。山口や秋山は1960年代、「フルクサス」の活動に参加しており、50年代から60年代への連続性を考察する上でも重要なグループと考えられます。博士論文「1950年代を中心とする美術と舞台芸術についての研究」(2010年、筑波大学)は、美術と演劇・ダンスのジャンルの交流を読み解くことによって、日本におけるパフォーマンスの萌芽段階を検証したものです。実験工房、制作者懇談会、草月アートセンターなどの検討を通じ、従来の「美術史」において周辺的な活動と見られがちであった「ジャンルの交流」や「横断」が、戦後の約20年間においてはむしろ美術家の中心的な仕事であり、美術史的意義の大きいものと位置づけました。「武智鉄二と前衛美術」(『武智鉄二 伝統と前衛』2011年、作品社)では、実験工房、具体、勅使川原蒼風、岡本太郎など戦後美術を牽引した作家・グループを次々に舞台作品に起用した演出家・武智鉄二に着目し、美術家との交流や共同制作の過程を明らかにしました。


今後の展望

 実験工房とジョン・ケージとの交流など解明の進められている課題をさらに掘り下げて検討することなど、海外動向との影響関係や相互交流の解明が挙げられます。それと同時に、1960年代半ば以降、急速な流れとなる「環境」や「インターメディア」など、1970年の大阪万博に向けた展開について、研究を進めていきたいと考えています。