日本における初期写真の受容と伝播、日本美術との融合

三井 圭司(みつい けいし) さん

東京都写真美術館 学芸員

はじめに

 1848年、日本へ初めての写真機材が輸入される。諸大名による洋学研究の時代を経て、1859年に日本が開国すると、横浜に日本で最初の写真館が誕生。幕末の動乱から明治の近代日本を活写した。このころに制作された原資料(オリジナル写真)は、日本全国の美術館、博物館、資料館、図書館、文書館等の公開施設を有する機関に多く点在している。だが、これらの収蔵情報の多くは詳らかなっていない。
 本調査は、日本国内の諸機関に点在する初期写真の所蔵調査することによって日本の初期写真史における基礎研究を行う試みであり、これらに内在する日本絵画との関連性についても同時に調査する試みである。


研究の成果

・初期写真の全国規模の所蔵調査
 2006年からアンケート調査→集計→現地調査の流れで所蔵調査をおこない、すべての地域のアンケート調査を終了している。(総アンケート送付数:7,238通、所蔵有り回答:407館)実地調査は5期(4地域+補足調査)に分けておこなうことを予定しており、現在3期まで終了している。
・初期写真史研究資料/初期写真文献の復刻
 初期写真研究はすでに大正初期から行われているが、これらの資料はすでに絶版になっていたり、当時から非売品であったりする資料が少なくない。これらを現代語訳して復刻し研究報告書に収録する。また、初期写真師が制作した文献の現代語訳についても同様に行い、研究報告書に収録することによって、今後の初期写真研究の一助となるべく基礎資料を制作する。
・日本絵画文化と初期写真の関係に関する研究
 上記のような基礎研究を行うと共に、初期写真における浮世絵をはじめとする絵画文化との関連性についてあわせて調査を行っている。これは外来文明である写真が日本の視覚文化として定着する際、単に西欧の様式・有り様をそのまま受容したのではなく、在来の絵画文化と融合して明治近代的視覚へ変容する一角をなしているという視座に基づき、調査作品における日本絵画文化的性格を研究し、初期写真の持つ性質を詳らかにする試みである。


今後の展望

研究予定と方向性
・東北・北海道の実地調査(第4期調査)
2010年に行った2,429通のアンケート調査によって、117機関に初期写真が収蔵されていることが判明した。これに基づき、2012年春から現地調査を行うことを予定している。
・既調査地域の再調査(第5期調査)
2006年から今日までの調査で、関東~沖縄の地域については実地調査が終了しているが、地域調査終了後に判明した収蔵機関もあるため、穴埋め調査をおこなう。
・全期調査終了後に、「総集編」として展覧会を開催すると共に、全調査をまとめた報告書を制作する。


参考文献等

『夜明けまえ 知られざる日本写真開拓史Ⅰ.関東編 研究報告』(2007年、東京都写真美術館)
『夜明けまえ 知られざる日本写真開拓史Ⅱ.中部・近畿・中国地方編』(2009年、東京都写真美術館)
『夜明けまえ 知られざる日本写真開拓史 四国・九州・沖縄編』(2011年、東京都写真美術館)


図版キャプション:下岡蓮杖「題不詳(相撲)」明治時代初期、東京都写真美術館蔵