近代デザイン史 「日仏における美術工芸交流史、及び図案法」

廣瀬 緑(ひろせ みどり) さん

パリ・ディドロ大学東洋言語文明学科 助教授

研究業績

 博士論文「明治期の染織産業における日仏の相互的影響についての研究」では19世紀後半のフランスのミュルーズ、リヨンにおける染織と大阪、京都、横浜など日本の染織との美的、産業的面からの交流を日仏の資料に基づいて調査しまとめた。特にミュルーズでは日本の図案を用いたモスリンが生産されていたことは現物から分かっていたが、文献上にはどこにも記録が見当たらなかったものを初めて当時の染織業者の記録からも明確にした。またリヨンの織物については、染織図案の変遷と日本の図案の関わりを作品とともにリヨンの織物学校の記録、当時のデザイナーの活動などから明らかにした。日本側におけるフランスからの影響としては、大阪の船場におけるモスリン産業がミュルーズと関係があったこと、万国博覧会における京都の美術染織にゴブランの影響があることなどをまとめ、開国によって急に高まった日仏の交流を染織の分野を取り上げて研究した。  また、その後の研究として、1879年にリヨンに建設されたギメ美術館で東洋物品鑑定人として勤務していた今泉雄作(1850-1931)のリヨンにおける活動について調査し、学会誌にまとめた。今泉雄作は岡倉天心ほど知られていないが、「茶」については岡倉天心に影響を与えた人物であり、日本に帰国してからは東京美術学校で初めて図案法を教え、また東京帝室博物館長としても実際の博物館業務を行うなど異色の人物である。彼の図案法は1894年に初めてわが国で理論としてまとめられたものであり、日本のデザイン史において重要なものであると考えたので、その一環としてこのテーマを取り上げて研究した。


研究成果のポイント

 今まであまり研究されなかった資料に注目し、新資料を発見したこと、また美術、染織、デザインなど広範囲にまたがる分野において、日仏の交流、近代デザイン史という観点から研究を深めてきた点にある。これらの研究成果は全て日仏両国の学会における口頭発表、学会誌などへの論文発表、及び博士論文にまとめ、大学の教科書となったものもある。


今後の展望

 今後の展開としては、2008年に現在勤務しているパリ・ディドロ大学を中心に染織と産業をテーマにしたシンポジウムの開催を予定しており、現在その準備を進めている。日仏双方の研究者にも呼びかけ研究分野の交流、発展に努めることも重要だと考えている。